鼻炎は、頻繁にくしゃみが出る、鼻水が出る、鼻が詰まるなどの症状がでます。中でもハウスダストや花粉などが原因で起こる鼻炎をアレルギー性鼻炎といい、春先に多いスギ花粉による花粉症の症状もその一つです。 鼻炎の原因を調べるには問診、鼻鏡検査、鼻汁好酸球検査などを行います。検査技師はこの鼻汁好酸球検査を担当しています。検査方法は、まず患者様の鼻水を綿棒で採取します。これを検査用のガラスに薄くのばし、染色液で染めます。その後顕微鏡で観察し、白血球の一種である好酸球と呼ばれる細胞が認められればアレルギー性鼻炎の可能性が高いと言えます。 鼻炎がアレルギー性のものか、別の原因によるものかによって治療方法が異なります。症状がある方は耳鼻科を受診し原因を調べ、早めに治療を受けることをお勧めします。 |
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肺がんを調べる検査のひとつに、痰の細胞診があります。これは痰を採取し、がん細胞や異型細胞と呼ばれる正常とは異なる形態の細胞があるかどうかを顕微鏡でみる検査です。一般的に1回の採痰よりも、3日間連続で保存液の中に痰を採りためた蓄痰の方ががん細胞の検出率が高くなるといわれており、自宅で採取できることから主に外来患者さまやドック健診などで行われています。
検査において痰の性状はとても重要で、唾液のみで肺や気管の細胞がみられなければ、「判定不可のため要再検査」という判定となります。痰がしっかり採れてはじめて評価ができ、結果は「異型細胞がみられない」、「(異型細胞の中でも程度によって)軽度・中等度・高度異型細胞がみられる」、「がん細胞がみられる」となります。
喫煙している方や痰に血が混じるという方は、蓄痰細胞診の検査を受けてみましょう。
採血の時、患者様から「血液が黒いようだが…」と心配された様子で言われることがあります。そこで今回、赤い血液と黒っぽい血液のお話をしたいと思います。
血液中の赤血球にはヘモグロビンと呼ばれる色素があり、酸素と結合して血管を流れ、酸素を体中に運ぶ役割を担っています。また、ヘモグロビンは酸素と結合している時としていない時とでは色が違います。肺から取り入れた酸素を多く含んでいる血液は動脈血といい、鮮やかな赤色をしています。一方、体中を巡り組織に酸素を受け渡した後の血液は静脈血といい、酸素が少ないため黒っぽい色をしています。
一般的な検査を行なう時の採血は静脈血を採取するため、通常は黒っぽい色をしています。血液の色は個人差がありますが、採血された血液が黒いからといって心配はいりません。
動脈硬化とは文字通り血管が硬くなってしまう病気です。血管が硬くなると血液の流れが悪くなり、心筋梗塞や脳梗塞などの原因となります。年齢を重ねるとともに血管は硬くなってきますが、高血圧や高脂血症など生活習慣病によっても進行します。また、たばこやストレスも原因の一つとされています。
動脈硬化を調べる検査の一つに、ABI検査があります。ABI値は、両腕と両足首の血圧を測定し、足首の血圧を腕の血圧で割った値のことを言います。通常、足の血圧は腕の血圧に比べやや高い値を示し、ABI値は1.0~1.1程度となります。しかし、動脈硬化の進行によって足の血管が狭くなったり閉塞してしまうと、十分な血液を送れなくなるため足の血圧が低下してしまいます。そうなると腕の血圧より足の血圧のほうが低くなるため、ABI値が0.9を下回るようになります。
ABI検査は上半身は薄着になってベッドに寝ていただいた状態で、約5分ほどで終了します。
鉄は私たちの体に必要な成分ですが、体内で作ることはできず、食物から摂取し小腸で吸収されます。その2/3は、体内の酸素運搬を行っている赤血球中のヘモグロビン(血色素)を作るために使われます。残りの1/3は肝臓や脾臓などに貯蔵されます(貯蔵鉄)が、何らかの原因で血液中の鉄が不足すると、貯蔵鉄を取り崩し補うようになります。さらに貯蔵鉄も足りなくなると、ヘモグロビンが十分に作れず貧血を起こし、体に酸素が行き渡らないため動悸や息切れ、倦怠感、頭痛などの症状が現れます。これを鉄欠乏性貧血と呼びます。
貧血は血液検査でわかります。赤血球内のヘモグロビン量の測定や血液中の鉄分の量を調べる血清鉄測定、貯蔵鉄の量を反映するフェリチンという物質の測定などを行い、これらが低い場合には鉄欠乏性貧血と診断されます。鉄が不足している原因を調べることも大切であり、貧血の症状を感じたら医療機関を受診し検査を受けることをおすすめします。
腫瘍にはさまざまな種類があります。その腫瘍が特徴的な物質を過剰に産生することがあり、腫瘍マーカーとして検査されています。腫瘍マーカーは血液検査で調べることができ、がんのふるいわけだけでなく、診断の補助や術後の経過観察でも使われています。
CA125は、主に卵巣腫瘍が良性か悪性かを区別するのに有用とされている腫瘍マーカーです。値が異常に高くなる場合には悪性の可能性があるといわれていますが、がんの性質によっては必ずしも高値になるとは限りません。また、子宮内膜症や良性の卵巣腫瘍でも高値になることや、月経や妊娠などホルモン周期によっても数値が変動することがあります。
そのため、CA125の値だけでなく画像検査や身体所見、他の血液検査結果などを総合して判断されています。
体に腫瘍ができると健康な時にはほとんど見られない物質が腫瘍から産生され、血液中に出現します。この物質を「腫瘍マーカー」といいます。腫瘍マーカーのひとつにCEAがあり、採血した血液を使って検査します。
CEAは、胃や大腸など様々な臓器に悪性の腫瘍(がん)があるかどうかのふるい分けをするために測定されていますが、健康な人の中でも3%の人は基準値を超える場合があります。加齢や喫煙でもやや高値を示す傾向があると言われているため、CEAの値が高いと必ずがんが存在するとは言えず、反対に値が低いからといってがんがないと言い切ることはできません。
がんの確定診断は、CEA以外の様々な種類の腫瘍マーカーの値や、超音波検査・X線CT・血管造影などの画像診断と、内視鏡検査・生検(組織の一部を取って調べる病理検査)などを行ない、総合的に判断されます。
大腸菌は私たちの腸に存在し、多くは無害ですが、中には悪さをするものもあります。牛や豚などの腸に存在する病原性大腸菌O-157がその中の1つで、感染すると3~4日の潜伏期間を経て激しい腹痛、発熱、下痢や血便などの症状がでます。また、ベロ毒素と呼ばれる強い毒素を産生するものもあり、溶血性尿毒症症候群や脳症などを合併すると言われています。特に小児や高齢者は重症化しやすいとされ注意が必要です。
O-157の検査は便で行います。便を特殊な培地に塗り、大腸菌の発育を認めたらその種類を調べていきます。O-157が検出されたら、同時にベロ毒素の産生の有無も調べます。
食中毒は初夏から秋にかけて多くなります。O-157は非常に感染力が強いため、集団感染を防ぐためにも手洗い、肉などの加熱処理をしっかり行ないましょう。
ピロリ菌は胃に生息する細菌です。年齢が高いほど感染者が多く、50歳以上で約7割の人が感染しているといわれています。私達の胃は粘液で守られていますが、ピロリ菌がいると粘液が減って胃の壁が傷むので、胃炎や胃・十二指腸潰瘍(かいよう)、さらには胃がんの発生にも関係することがわかっています。
尿素呼気試験は、ピロリ菌が尿素を分解して二酸化炭素を作るという性質を利用した検査で、検査薬を飲んで20分程度安静にし、その前後の呼気を採るだけで調べることができます。服薬後の呼気に二酸化炭素が増加していた場合、ピロリ菌に感染していると診断されます。
この検査は、ピロリ菌の除菌後に治療効果を判定するためにも行われています。
子宮頚がんは、子宮頚部(子宮の入り口)にできるがんで、近年20~30代の女性に急増しています。原因はHPV(ヒトパピローマウイルス)で、性交渉で感染します。HPVの感染自体はごく自然なことでそのほとんどが消滅しますが、高リスク型とよばれるHPVに長期間感染すると、子宮頚がんになる可能性があります。
子宮頚がんは、細胞診検査を受けることでがんになる前の段階(前がん病変)を発見することができます。細胞診検査というのは、子宮頚部をブラシでこすって細胞をスライドガラスに塗り、染色をして、前がん病変やがん細胞がないかどうかを顕微鏡で見て調べる検査です。
子宮頚がんは、ある程度進行するまで自覚症状がほとんどないため、定期的に細胞診検査を受けることが大切です。4月9日は『子宮の日』、年に1回は子宮がん検診を受診しましょう。
血液型の検査は貧血や出血で輸血が必要となった場合に重要な検査です。血液型は数百種類あると言われていますが、最も重要なのはABO式およびRh式血液型です。
ABO式血液型は、赤血球の膜についている「A抗原」「B 抗原」と呼ばれる物質によって決定されます。A抗原がついているとA型、B抗原がついているとB型、両方ついていればAB型、両方ついていなければO型です。
検査では、A抗原がついた赤血球を凝集させる(固める)「抗A血清」と、B抗原がついた赤血球を凝集させる「抗B血清」と呼ばれる検査薬を使い、これと血液を混ぜます。そして、抗A血清とのみ凝集するとA型、抗B血清とのみ凝集するとB型、両方と凝集するとAB型、どちらとも凝集しなければO型と判定します。
またRh式血液型は、赤血球の膜に「D抗原」がついているかどうかを「抗D血清」を使って調べています。
日本人のおよその割合は、ABO式血液型ではA型40%、O型30%、B型20%、AB型10%で、Rh式血液型ではRh(-)の人は0.5%で、ほとんどの人がRh(+)です。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することで起こる病気です。感染力が強く、特に高齢者や慢性疾患(しっかん)を持つ人は重症になりやすいため、早めに治療を始めることが大切です。
医療機関では、インフルエンザに感染しているか検査キットを使って調べることができます。最初に、細い綿棒で鼻の奥をこすります。それを試薬液に入れ、抽出(ちゅうしゅつ)した液体を反応板に数滴落とすと、15分前後で結果が出ます。陽性(+)と出た場合はインフルエンザの可能性が高く、A型かB型のどちらなのかもわかります。
しかし、陰性(-)の時に感染していないとは言い切れません。これは、感染直後のウイルス量が少ない時期に検査をした場合や、鼻をこすった綿棒に十分な量のウイルスが付かなかった場合に、感染していても(-)となることがあるからです。このため、症状や周囲に感染者がいるかどうかなどが考慮されて、インフルエンザにかかっていると診断されることがあります。