まず血液型を調べます。血液型には赤血球の表面にある抗原の違いによりたくさんの種類がありますが、その中で最も重要なABO式とRh式を検査し、同じ血液型の血液を選びます。
次に抗体の有無を調べます。過去の輸血などにより自分とは異なる血液が身体の中に入ることで、 抗体(不規則性抗体)がつくられてしまうことがあります。この抗体は、副作用を引き起こす原因となるため、種類を調べて反応しない血液を準備します。
最終的に、患者さんの血液と輸血する血液を試験管の中で混和させ、適合性を確認する交差適合試験を行います。この検査に合格した血液のみを輸血します。
これらの一連の検査は安全な輸血を行うために重要な検査です。
マイコプラズマ肺炎とは、マイコプラズマニューモニエという病原体が引き起こす呼吸器感染症で、咳のしぶきや病原体の付着したドアノブなどを介して感染します。
感染から症状が出るまでの期間は2~3週間です。発熱、頭痛、全身倦怠感など風邪に似た初期症状が現れ、その後、特徴的な乾いた咳が出て解熱後も長く続きます。子どもに多いとされていますが大人も罹患します。
一般的な検査方法として、血液検査があります。感染が疑われた時点で採血し、2~3週間後に再び採血をして、病原体に対する抗体の増え方を調べます。そのため診断には時間を要します。
この他に咽頭を綿棒でぬぐい、そこから病原体成分を検出する方法があります。この検査はマイコプラズマ以外でも陽性になる事があるため信頼性は十分とは言えませんが、短時間で結果がわかり、採血が必要な血液検査より子どもへの負担は軽減できます。
患者の生活環境や症状の経過をふまえて、適切な検査方法を選択し、早期治療につなげています。
肝炎はウイルス感染や過度の飲酒、薬剤などが原因で肝臓に炎症が起きる病気で、日本では肝炎ウイルス感染によるものが約8割を占めています。炎症によって肝臓の細胞が壊れてしまい、肝臓の機能が低下します。進行すると、肝硬変や肝臓癌を引き起こすため、早期の発見・治療が重要です。
肝臓の機能や肝炎ウイルスに感染していないかどうかは、血液検査によって分かります。AST、ALT、γ-GTPの数値の上昇は肝臓の細胞が壊れていることを示し、γ-GTPは過度の飲酒によっても上昇します。また、B型やC型などの肝炎ウイルス感染の有無を調べることができます。
さらに病気の状態を詳しくみるために超音波検査、CTなどの画像検査や、肝生検が行われることがあります。肝生検は、皮膚から肝臓に針を刺して組織の一部を採取し、肝臓の細胞を顕微鏡で観察する検査で、病気の原因や治療方針などを決めるために行われます。
心筋梗塞は、心臓の筋肉(心筋)に栄養を送る冠動脈と言われる血管が詰まり、その結果心筋の細胞が死んでしまう(壊死)病気です。心筋梗塞発症後は、時間経過とともに壊死の範囲が大きくなってしまうため、早期に診断し治療することが重要です。
心筋梗塞の診断に関わる血液検査の一つに「トロポニンI」があります。トロポニンIは心筋の収縮を調節する蛋白で、心筋が傷害を受けると血液中に増加してきます。トロポニンIは血液を採るだけで検査でき、心筋梗塞発症後2~3時間の超急性期といわれる時期においても精度よく測定できるため、心筋梗塞の早期診断に役立ちます。
ただし、心筋症や狭心症などでも心筋が傷害を受け増加することがあるため、心電図検査、心臓超音波検査、CT検査などを行い総合的に判断されます。
神経伝導速度検査では、運動神経(脳からの命令を筋肉に伝える神経)と感覚神経(手足で感じた刺激を脳に伝える神経)に異常がないかを調べます。運動神経の障害では力が入りにくい、筋肉がやせるなどの症状が現れ、感覚神経の障害では手足がしびれたり、痛みが感じにくくなることがあります。このような症状がある時、原因が神経なのかどうかを調べるために検査を行います。
検査方法は、皮膚の上に電極を貼り、神経を電気で刺激して、電気の伝わる速さや反応の大きさなどを評価します。神経に障害があると電気の伝わる速度が遅くなったり、反応が小さくなります。検査をすることによってどの神経が、どこでどのように障害されているかを判定することができます。
電気の刺激は低周波のマッサージ器のようにピリピリとしますが、体に害はありません。
いろいろな感染症を引き起こす細菌とウイルスですが、似ているようで大きな違いがあります。
まず、細菌はウイルスよりも数十~百倍の大きさがあり、培地と呼ばれる栄養たっぷりの寒天で増殖(培養)させることができます。その性質を利用して、患者さんの尿や便、痰などから感染症の原因菌を見つけ、その菌にどんな薬(抗菌薬)が効くかを調べることができます。細菌は食中毒を引き起こす黄色ブドウ球菌や膀胱炎などをおこす大腸菌などが有名です。
一方、ウイルスは顕微鏡を使っても見えないほど小さく、1㎜の1万分の1くらいの大きさです。細菌のように培養することができないので、インフルエンザウイルスやノロウイルスなど一部のウイルスについては、検査キットを用いて調べます。血液検査で感染しているかどうか分かる場合もあります。また、細菌に有効な抗菌薬はウイルスには効果がありません。
関節リウマチとは、手足の指、手首・足首などの関節に炎症が起きて軟骨や骨が破壊され、痛みや変形が生じる病気です。自分を守るはずの免疫が誤作動を起こし、関節を包む滑膜を攻撃してしまう自己免疫疾患です。
血液で検査する項目は主に3つあります。「RF(リウマトイド因子)」は自己抗体のひとつで、関節リウマチの多くの患者さんに存在しますが、他の病気でも高値となることがあります。「抗CCP抗体」は患者さんの滑膜に多く出現する蛋白に対する自己抗体です。他の病気ではあまりみられず、早期でも検出されることから、診断に役立ちます。「MMP-3」は滑膜でつくられる軟骨を壊す酵素です。滑膜の炎症を反映して血液中に増えるため、進行の程度や治療効果の判定に用いられます。
これらの項目に炎症の度合いをみる血液検査を組み合わせ、症状や画像検査などから総合的に診断されます。
梅毒は梅毒トレポネーマという病原体による感染症です。日本での感染者数は1970年代から減少傾向となり少ない状況が続いていましたが、2010年以降急速に増加し、17年には10年の9倍にまで達しました。主に性的接触で感染し、最初は局所的な皮膚症状ですが進行すると血流に乗って全身に広がり、バラ疹と呼ばれる発疹が現れ、最終的には心臓や脳を侵すようになります。
梅毒の診断には血液検査が行われます。TP抗原法と脂質抗原法があり、感染に伴って血液中に産生される抗体を検出します。TP抗原法は病原体に対する抗体を検出するため梅毒の診断に特化していますが、感染してから検査が陽性になるまでに時間がかかります。脂質抗原法はTP抗原法より早期に陽性になりますが、梅毒でなくても陽性になる事(偽陽性)があります。それぞれ長所、短所がありますが、組み合わせて検査を行うことにより、梅毒の診断につなげることができます。
心臓は全身に血液を送るポンプの役割を持っています。心臓の機能が低下した状態を心不全といい、全身に影響を及ぼすため、息切れや足のむくみなど、さまざまな症状が現れます。心不全の原因を調べるために行われる超音波検査では、心臓の動いている様子をみて、その動きが悪くないか、心臓の大きさは正常かを調べます。
また、心臓には血液が一方向に流れるように働く弁がついています。弁の働きが悪くなると、血液が通過しにくくなったり、弁がきちんと閉まらず逆流して心不全の原因となるため、検査では弁の形や動き、血流の向きや速さなどを観察します。
検査方法は、まず胸が見えるように洋服をまくり上げ、横向きに寝た状態で、超音波の機械(プローブ)を胸に当て心臓を観察します。超音波は体に無害であり、痛みもありません。検査時間は約30分で、飲食の制限はありません。
腫瘍にはさまざまな種類があります。その腫瘍が特徴的な物質を過剰に産生することがあり、腫瘍マーカーとして検査されています。腫瘍マーカーは血液検査で調べることができ、がんのふるいわけだけでなく、診断の補助や術後の経過観察でも使われています。
PSA(前立腺特異抗原)は、おもに前立腺から精液中に分泌されるタンパク質の一種で、前立腺の異常により血液中の濃度が高くなることから、前立腺がんの腫瘍マーカーとして検診などで広く検査されています。
PSAの値が高い時は前立腺がんの可能性が疑われますが、それ以外にも、前立腺肥大症や前立腺の炎症など、さまざまな前立腺の異常で高値を示すことがあります。このため、血液検査以外にも超音波検査やX線CTなどの画像検査や生検(組織の一部を取って調べる病理検査)などを行い、総合的に判断されます。
24時間自由行動下血圧測定検査は、高血圧症の診断のひとつとして用いられ、日常生活での血圧を24時間、定時的(1時間または30分ごと)に測定し、血圧の一日の変化を調べる検査です。夜間の血圧は昼間に比べて下がっているか、早朝に高血圧はないか、薬による血圧コントロールができているかなどが判断できます。
検査方法は、腕に血圧計を巻き、記録器をベルトで腰に付けます。また、心電図を同時に記録するため胸に電極シールを貼ります。検査当日は腕に血圧計を巻くため、袖周りに余裕のある服装にしてもらう必要があります。
装着中は入浴や電気毛布の使用はできませんが、その他は一日普段通りに生活できます。また、解析を行うための重要な資料として、血圧測定時(1時間または30分ごと)に何をしていたか行動記録用紙に記入してもらいます。