血液検査ではこれらの数を機械で測定しますが、異常に増えたり減ったりしていたときに、血液細胞を目で見ることで形にどんな異常があるかわかります。これを血液像検査といい、採血した血液をスライドガラスに薄く塗り、染色して顕微鏡で形や大きさに異常がないかを観察します。
白血球の数が増加し、ウイルス感染や細菌感染による細胞の変化がみられると、感染症の診断につながります。また、異常な形をした白血球が多数みられると、白血病を疑います。このような場合には骨髄に異常があることも考えられ、次の検査へ進めるきっかけにもなります。
細胞を目で見ることにより、機械の測定だけではわからないさまざまな疾患がわかることがあり、とても有用な検査です。 肝炎ウイルスや過度なアルコール摂取によって肝臓が炎症を起こしている状態が続き、肝臓の細胞が破壊され、線維がたまってくることを「線維化」といいます。線維化が進行すると肝硬変へと移行して肝臓が硬くなってしまいます。
肝臓の線維化を調べる検査は、これまで「肝生検」といわれる方法が主流でした。これは直接肝臓に針を刺して細胞を採取するため、体に負担がかかる検査です。 ここ数年の間に簡易的な方法として超音波検査でも線維化の評価ができるようになりました。
この検査は、お腹の超音波検査と同様に右の脇腹に機械を当てて超音波が伝わる速度を調べるため、痛みを伴わず短時間で検査ができます。肝臓が硬くなると超音波の速度が速く伝わる性質を利用して線維化の程度を測定します。定期的に検査を行うことで、過去と比較して値がどのように変化したかを評価し、肝硬変への移行の予防や早期診断につなげます。 糖尿病が進行してくると、血管や神経がしだいに障害され、さまざまな合併症がでてきます。糖尿病の3大合併症は「神経障害(DPN )」「網膜症」「腎症」で、その中でもDPN が最も早期に現れ、糖尿病の方の約半数に認められます。これを調べる検査にDPNチェックがあります。 DPN は、まず両手両足の末端の痛みや温度を感じる知覚神経から障害が起きてきます。症状は痺れや痛み、冷えなどさまざまですが、自覚症状がまったくない人もいます。そのため、足に小さな傷ができても気付きにくくなり、放置してしまうために悪化し、潰瘍や壊疽になる恐れがあります。 チェック方法は、足の踵からふくらはぎの神経に5~15秒程ピリッとした電気刺激を与え、興奮が伝わる速度と大きさを測定します。検査時間は約5分で、DPNの程度を5段階で評価します。早期に発見できれば改善が期待できるので、定期的に検査を行うことが大切です。 CPK(クレアチンフォスフォキナーゼ)は筋肉の収縮・弛緩に大きな役割を果たしている酵素で、骨格筋や心筋などの筋肉に多く含まれています。筋肉に障害がおこると血液中に漏れ出てくるため、採血することでCPK値の上昇が分かります。
また、CPKにはアイソザイムと呼ばれる3種類のタイプがあり、上昇の原因が分からない場合に検査することで障害の部位を推測できます。骨格筋型(CK︱MM)は骨格筋の融解が起こる横紋筋融解症、心筋型(CK︱MB)は心筋が障害される心筋梗塞、脳型(CK︱BB)は脳の障害が起こる脳梗塞などでそれぞれ上昇します。しかし、激しい運動や肉体労働などで筋肉が損傷を受けてもCPK値は上昇することがあるため、原因疾患の特定は症状や行動歴の確認、他の検査の結果をもとに総合的に行います。 尿は腎臓でつくられ、尿管を通過して膀胱に貯留し、尿道を通って体外へ排泄されます。膀胱は尿を一時的にためておくための袋状の臓器で、成人では300~500㎖の尿を溜めることができます。
おもな膀胱の疾患には膀胱腫瘍や結石、膀胱炎などがありますが、それらを調べるための検査方法のひとつに超音波検査があります。
検査は、仰向けに寝た状態で下腹部に機械をあて、膀胱の壁の様子や内部を観察し腫瘤や結石がないかをみます。膀胱は尿が溜まっていないと小さくしぼんで内部が観察しにくいため、検査前には軽く尿意を感じる程度まで尿を溜めておく必要があります。他にも、尿検査で血液が混じっていないか、がん細胞がないかを調べる方法もあります。
また、頻尿や残尿感などの症状がある人には、超音波による「残尿測定」を行うことがあります。排尿直後に膀胱内にどのくらい尿が残っているかを調べます。 食事から摂取する栄養素の一つであるタンパク質は、腸で腸内細菌により消化され、その過程でアンモニアが産生されます。アンモニアは人間にとって有毒な物質で、通常は肝臓に運ばれ解毒機能により毒性の低い物質に変わり、尿とともに体外に排泄されます。
しかし、肝臓の細胞が障害を受ける病気(肝炎や肝硬変など)が進行すると、肝臓の解毒機能が低下し、血液中のアンモニア濃度が上昇してしまいます。さらにアンモニアは脳に到達すると肝性脳症を引き起こし、手指の震えや物忘れなどの症状が現れ、放っておくと昏睡状態に陥ることもあるため、早期に治療が必要です。
アンモニア濃度は採血をして調べることができ、肝臓の機能に関する他の検査と組み合わせて行います。肝性脳症の症状が軽度な場合は自覚できないことも多いため、肝臓の機能が低下している人は定期的な検査が必要となります。 私たちの体の中では、血液は固まらないように維持されていますが、血の塊(血栓)ができると溶かして除去しようとする機能があります。Dダイマーとは、血栓が溶かされた時に生じる物質で、血液検査でわかります。健常者ではほとんど検出されません。
Dダイマーの数値上昇は血栓の存在を示しているので、深部静脈血栓症(DVT)の診断に用いられます。 DVTは長時間同じ体勢で足を動かさないでいると、血流が滞り足の太い血管に血栓ができ詰まってしまう病気で、昨年の台風1号の避難所生活で懸念されました。
また、Dダイマーは播は種しゅせい性 血管内凝固症候群(DIC)の診断にも用いられます。DICはがんや白血病などの合併症として発症します。全身の血管に多数の小さな血栓ができてさまざまな臓器に障害が起こります。それに伴い、血栓を溶かそうとする機能が強く働きすぎてしまい、出血しやすくなる危険な病気です。
他にも、Dダイマーが上昇する病気はあります。症状に合わせて医師が必要性を判断し、検査しています。 甲状腺は、のどぼとけの下にある小さな臓器で、全身の代謝を調節する甲状腺ホルモンを生成しています。甲状腺の疾患には、甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる機能亢進症、分泌が不足する機能低下症、癌や良性の腫瘤があります。甲状腺の疾患によりホルモンのバランスが崩れると、動悸や息切れ、体重の増減、汗をかきやすい、疲れやすい、首の腫れなどさまざまな症状が現れます。
甲状腺検査には、甲状腺ホルモン値を測定する血液検査、CTや超音波検査などの画像検査があります。
甲状腺超音波検査は、仰向けに寝た状態で首に機械をあてて画像を見ながら行います。検査は20分程度で、甲状腺の大きさを計測し、腫瘤や周囲のリンパ節の腫れがないかを観察します。腫瘤があれば大きさや形、内部の様子を細かく見ていきます。
超音波検査で腫瘤が見つかった場合、甲状腺内部の細胞を採取し、良性か悪性かを判断する穿刺吸引細胞診検査が必要となることもあります。
甲状腺疾患の症状がある人や、首が腫れていると言われた人は甲状腺検査を受けることをおすすめします。 百日咳は、百日咳菌という細菌に感染ることによって起こる呼吸器感染症です。最初は鼻水、咳などの風邪症状から始まり、次第に激しい咳に変わっていきます。長引く咳や咳の終わりに息を吸うとヒューッと音がするのが特徴的です。
検査は、鼻の穴に細い綿棒を入れて粘膜をこすり、百日咳菌がいないかを調べる遺伝子検査と、採血をして血液中の百日咳菌に対する抗体を調べる2種類があります。遺伝子検査は早期診断に優れた検査ですが、感染後4週間を越えると菌の量が少なくなるため抗体検査の方が有効な場合もあり ます。
子どもの頃のワクチン接種で発症を防ぐことが可能ですが、ワクチンの効果が弱まってきた成人や接種前の乳幼児が感染すると、感染の拡大や重症化をまねくこともあり注意が必要です。風邪をひいた後に1週間以上咳が止まらないときは早めに医療機関を受診して適切な検査、診断、治療を受けましょう。