長野中央病院 血液浄化療法センター
腎臓の働きが、さまざまな原因で徐々に悪くなる病気を慢性腎臓病と呼び、腎臓の機能が10%程度になると透析治療や腎臓移植が必要となります。今回は腎臓移植(腎移植)について説明します。
腎移植とは、慢性腎不全に陥った人に他の人の腎臓を移植することで、腎臓の機能を取り戻す唯一の治療です。腎移植には、亡くなった人から腎臓を提供してもらう「献腎移植」と、健康な親族から片側の腎臓を提供してもらい移植する「生体腎移植」があります。日本では年間約1600件の腎移植が行われています。
献腎移植を希望している人は2015年末で約1万2800人ですが、移植は年間約150件しか行えず、移植を受けるまでの待機期間は15年にもおよびます。
日本では、献腎数の少なさから「生体腎移植」が盛んに行われています。高齢者や糖尿病の人にも積極的に腎移植が行われるようになっており、血液型の異なる人や夫婦など非血縁者間の移植でも良好な成績が得られています。

長野中央病院 検査科
プロトロンビン時間(PT)は、血液に試薬を添加し血液が固まるまでの時間を調べる検査です。この検査は「PT-INR」として表すことで、どこの病院で測っても同じ指標で見ることができます。
PT-INR検査は、薬の量を調節するために行われます。「ワーファリン」という薬で、心臓や脳の病気などで血液中に血の塊(血栓)ができやすい状態の時に使います。薬の効果が低いときは血栓ができやすく、効きすぎると出血が止まりにくくなってしまうため、適量かどうかを判断するのにとても重要な検査です。
また、肝障害やビタミンK欠乏症などで異常値を認めることがあるほか、手術などの前に行う血液が固まる機能を調べるための検査としても有用です。

長野中央病院 リハビリテーション科
リハビリ場面で患者さんから「この筋トレは何回やったらいいですか?」や「1日何回筋トレしたらいいですか?」と聞かれることが多いです。そこで、今回は高齢者が効果的に筋力トレーニングを行う方法についてお伝えします。
筋力トレーニングは高強度の負荷を筋肉に与えて行うことが有効であるとされていますが、高齢者の場合は、筋組織が若年者に比べると傷つきやすく、病気や怪我、関節の痛みなどにつながるリスクがあるため、低~中強度でトレーニングを行うことをおすすめします。
<おおよその目安>
強度:1つの運動を10~15回繰り返した後に、「ちょっときついな、ちょっと疲れるな」程度
1回あたりの回数:10回~15回を2~3セット。
頻度:1日1回程度で週に2~3回(毎日ではなく隔日など間を空ける)
以上を目安に、自分に合った適切な負荷量で効果的な筋力トレーニングを行ってみましょう。

膝がつま先より前に出ないように。背中は真っすぐ保つ。強度はしゃがみ込む深さで調整しましょう。

長野中央病院 放射線科
MRI(磁気共鳴画像撮影法)は強い磁力を使って体内の断面図を映像化します。2022年4月より人間ドックのオプション検査として『頭部MRI,MRA+頸部MRA検査』を開始したので紹介します。
頭部MRI:脳の任意の断面画像(画像1)を得ることができ、脳出血・脳梗塞・脳腫瘍などの診断に役立ちます。
頭部,頸部MRA:脳血管と頸部血管を立体画像(画像2・3)として得ることができ、脳動脈瘤・動脈の拡張・狭窄などの診断に役立ちます。
脳の病気は、ライフスタイルに大きな影響を及ぼします。検査時間は25分程度ですが、脳や血管の異常・病気を早期発見するのに非常に有効な検査です。開始4か月で約70件と多くの方に受けていただいています。ぜひ人間ドックの際はオプションとしてご検討ください。
(*検査問診を行った結果、検査不可の場合もありますのでご了承ください)




長野中央病院 薬局
医薬品は正しく使っていても、副作用の発生を防げない場合があります。医薬品を適正に使用したにもかかわらず、その副作用により入院治療が必要になるほど重篤な健康被害が生じた場合に、医療費や年金などの給付を行う公的な制度が、「医薬品副作用被害救済制度」です。給付には、
1.入院治療を必要とする程度の健康被害で医療を受けた場合
2.日常生活が著しく制限される程度の障害がある場合
3.死亡した場合があり、種類により給付額が異なります。
給付の決定は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が、厚生労働大臣による医学・薬学的判定に基づいて可否を決定します。
法定予防接種によるものである場合、製造販売業者など、他に損害賠償の責任を有する者が明らかな場合、不適正な目的や方法などにより使用したことによるものである場合などは、救済の対象にはなりません。
給付の請求は、健康被害を受けたご本人またはご遺族が、直接PMDAに対して行います。まずは電話やメールでPMDAにご相談ください。

長野中央病院栄養科
入院中の食事は、患者さんの年齢や病状によって適切な栄養量を医師の指示に基づき提供しています。
献立は、日本人の食事摂取基準から1日当たりの目標が充足するように、食品別に目安量を決め作成しています。日本人の食事摂取基準は健康増進法の規定により厚生労働大臣が定めるもので5年ごとに改定し現在は2020年版の活用です。国民の健康の保持・増進、生活習慣病の予防のため、エネルギー及び栄養素の量の基準が定められたものです。患者さん個々にあった食事の提供のため改定にそった目標量の変更を行っています。
2015年版からの改定で変更した項目は、塩分の目標量減少や(男性8gから7.5g 女性7gから6.5g)食物繊維量の必要量の増加(20g)、カルシウム推奨量の増加(800mg)等がありました。年齢区分の細分化ではエネルギー量の増加が多くありました。

長野中央病院心臓病センター科
狭心症を代表とする虚血性心疾患の治療に対して、薬剤溶出性ステントが使用されるようになりました。しかし、薬剤溶出性ステント留置後は一定期間の二剤併用抗血小板療法が必要とされており、二剤併用抗血小板療法に伴い出血性合併症やステント留置後の再狭窄・ステント血栓症など治療によるリスクもわずかながらあります。
冠動脈内に狭窄病変があるとき、治療が必要なのかを判断する指標になるのが冠血流予備量比(FFR)で、狭窄病変によってどのくらい血流が阻害されているかを推測します。
通常は心臓カテーテル検査(冠動脈造影)に続いて行います。プレッシャーワイヤーという細さ約0.36mmの装置を冠動脈の狭窄病変の奥まで挿入して、病変の手前と奥の圧力を観察しFFRを測定します(図参照)。狭窄がなければFFR=1.0となります。非侵襲的検査との対比により、FFRが0.80未満であると治療を検討します。
FFRを測定することで、より科学的に治療の必要の有無を判断し、本当に必要な患者さんへのカテーテル治療が行えるようになりました。

長野中央病院検査科
これから暖かい季節に入ると、細菌が増殖しやすい環境となり、食中毒が多く見らるようになります。
腹痛や下痢などの症状があり、食中毒が疑われる際に行う検査のひとつに便培養検査があります。
便培養は、栄養が入った寒天培地に便を塗り、その培地を細菌が増殖しやすい35℃に温めることで、菌の塊を(コロニー)を肉眼で観察できるようにする検査です。
便にはさまざまな種類の細菌が含まれていますが、培地の種類によってコロニーの色や形が異なることから、細菌の種類を判別できます。
たとえば、サルモネラ菌を調べる専用の培地には鉄分が含まれており、サルモネラ菌が産生する硫化水素と反応してコロニーが黒くなることから、他の細菌と鑑別することができます。
食中毒は細菌が付着した食材を食べることで感染が起こるため、食材を十分に加熱することや、保存の際は冷蔵庫に入れるなどの注意が必要です。

長野中央病院・リハビリテーション科
今年の冬は、大雪やコロナ禍で外出の機会が極端に減ったのではないでしょうか。日常を取り戻すために「歩く」ことの効果と実践方法を紹介します。
■「歩く」ことの効果
次のようなさまざまな効果が得られます。
1:ストレスに強くなる:脳内セロトニン分泌量が増えてストレスや不安への耐性を調整する。
2:認知症の予防:3km/日以上歩くと、400m/日以下の群と比較して発症率が下がる。
3:血管の老化を防ぐ:食後の血糖値の乱高下を、軽い運動のウォーキングで軽減し、血管への負担を減らせる。
4:血液循環が改善し血圧が下がる:減塩に匹敵する効果が得られる。
5:アンチエイジング:骨に刺激が加わることで善玉ホルモンが分泌され、抗酸化作用や骨量を増やす、免疫力を高めるといった作用のあるホルモンがそれぞれ分泌される。
6:姿勢がよくなる:猫背が改善し肩こりや腰痛を軽減できる。
■歩き方の工夫
歩く時は、視線を遠くにして姿勢をよくする、左右均等に筋肉を使う、かかとの中心で接地して親指の付け根からつま先にかけて蹴り出す、肘を引いて普段よりも大きめに腕を振る(肩甲骨を動かす)というのが基本です。
痩せることが目的の場合は、普段より速い速度で歩き、軽く息が弾む、少し汗ばむ、心地よいといったレベルまで速度を上げます。そのためには、歩幅を大きくする、振り出す足に合わせて骨盤を前に出すといった工夫が必要です。
これまで脂肪燃焼には20分間以上歩く必要があるとされていましたが、最近では10分間の2セットでも効果があるという研究もあります。
最初は時間や歩数を気にせず、徐々にスピードアップし、気分の乗らない日は無理して歩かないといったことが長続きのコツです。
長野中央病院放射線科
放射線検査は、病気の診断や治療の成果を判定する時に欠かせないものです。正しい診断のために検査を受ける前の注意点をお話しします。
〔X線検査〕
検査部位にプラスチックや金属があると画像に写り込んでしまうので、検査着への着替えをお願いしています。次のようなものは検査前に外してください。
・フックやワイヤーのあるブラジャー、金属やプラスチックのついたキャミソールやスリップ
・ボタンのついた衣類
・ネックレスなどのアクセサリー類
・湿布、エレキバン、使い捨てカイロなど
〔CT検査〕
検査部位にある金属製のものや使い捨てカイロなど、撮影の障害になるものは外していただきます。プラスチックは外さなくても大丈夫です。ただ、MR検査とは違い、検査部位でなければ金属類があっても検査可能です。
〔MR検査〕
金属・チャック・ボタンのある洋服は、専用の検査着への着替えをお願いしています。また、携帯電話、時計、補聴器、キャッシュカードやクレジットカードは検査室へ持ち込むと故障の恐れがあります。
検査時に担当技師がご案内します。わからないことがあればお気軽にお尋ねください。


長野中央病院薬局
「今回処方された花粉症の薬が余ったから来年飲んでも大丈夫ですか?」「昨年もらった薬はいつまで使えますか?」「風邪で薬を処方されたけど、治ったから余った、今回の風邪の時にも使っていいですか?」などの質問はよく聞きます。薬が余ったらどうするか、使用してもよいのかお話しします。
◆薬は飲みきりが原則
病院で処方する薬(処方箋によって調剤薬局で受け取る薬)は、現在の症状や病気の状態に合わせ、個人用に考えられています。「似たような症状だから飲んでも大丈夫」というわけにはいきません。できるだけ、その時に飲み切ってください。
また、症状が治まったり薬が変更になって、薬が余ることがあります。新しい薬と間違って服用したり、子どもが誤って飲んでしまうと大変危険です。早めの処分をお勧めします。
◆市販薬は使用期限に注意
市販されている薬の保存期間は6か月~3年。外箱に使用期限が記載されています。しかし、この使用期限は未開封のまま、一定範囲の温度で保管した場合に限られています。
一度開封すると、薬が湿気や光の影響を受けやすくなり、変質してしまうことがあります。使用期限以内であっても、開封して半年が過ぎたら使用しないほうが良いでしょう。薬には湿気・温度・光に弱いものが多いので、保管には十分に気を付けましょう。
迷ったとき、困ったときは、薬剤師に相談してください。
