心臓弁膜症 気になるその症状、年齢のせいじゃないかも!?
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医療特集
心臓弁膜症と低侵襲治療_心臓弁膜症とは?
心臓の中にある「弁(バルブ)」が
うまく働かなくなる病気です。
心臓のイラスト

 心臓は全身に血液を送り出すポンプのような役割を果たす重要な臓器で、1日およそ10万回、休まず拍動しています。
 心臓の内部は4つの部屋にわかれ、各部屋にはドアのような役割を果たす4つの弁があります。
 弁は血液が通るときに開き、通り終えるとしっかりと閉まることで血液が逆流しないようにコントロールする役割があります。
 心臓弁膜症は、この弁が正常に動かなくなることで起こる病気で、主に2つの種類があります。

狭窄_閉鎖不全_どの弁にも起こりますが、なかでも「大動脈弁」と「僧帽弁」に多く起こると報告されています。
Special topic

心臓弁膜症 症状と治療 心臓弁膜症の症状

心臓弁膜症の症状は加齢にともなう変化とよく似ているため、症状に気づきにくい特徴があります。症状に気づかずそのまま放っておくと心不全につながる場合も…。

当てはまる項目が一つでもあればかかりつけ医に相談しましょう
〝年のせい〟じゃないかも!?
心臓弁膜症の症状_当てはまる項目が一つでもあればかかりつけ医に相談しましょう

心臓弁膜症の低侵襲手術

胸を開かずに行う「切らない TAVI」と、わき下 5〜8cm程度の切開で済む「小さく切る MICS」長野中央病院はこの二つの低侵襲心臓治療を同一施設で実施できる、北信エリアでわずか2施設しかない医療機関の一つです。高齢で開胸手術が負担となる大動脈弁狭窄症の方にはTAVI、働き盛りで早期復帰を重視される弁膜症の方にはMICSと、患者さんの年齢・リスク・生活背景に合わせた手術を行っています。

弁膜症の低侵襲治療①_TAVI(経カテーテル大動脈弁植え込み術)
心臓血管外科部長_八巻 文貴医師
弁膜症の低侵襲治療②_MICS(小切開心臓手術)
心臓血管外科_豊田 泰幸医師
入院日数、回復期間の比較
Interview

心臓弁膜症と低侵襲治療についてインタビュー

自覚症状がない弁膜症。
早期発見のために年1回の定期健診を

80歳以上の方は自己判断せず 疲れやすいと思ったら受診を

 「心臓弁膜症」はなかなかご自身では気づきにくい病気です。特に高齢者の方は加齢による体調不良だと思い込んで発見が遅れてしまうこともあります。極端な話、自覚がないまま病状が進み、突然死につながる場合もあります。「いつもよりちょっと疲れやすいな」という場合、若い方は気のせいであることも多いですが、高齢の方は「弁膜症」を疑ってみてもいいかもしれません。ご自身では気がつきづらいことも多いので、年に1回は健診を受けていただくことをおすすめします。

あなたの答えをあなたとみつける

 当院では「TAVI(経カテーテル大動脈弁植え込み術)」や「MICS(小切開心臓手術)」といった、患者さんの負担が少ない「低侵襲治療」を推奨しています。「TAVI」は人工弁を装着する治療法です。若い方の場合は、人工弁の劣化が早く10年ほどで取り替えないといけないため、あまり積極的にはおすすめしていません。比較的若い年代の方には傷を最小限でおさえられる「MICS」を提案することもあります。ただ、一概には言えませんので、患者さん一人ひとりの症状を見て、その方に適した治療法をご提案するようにしています。

手術室の様子 県内でも先駆けて当院にTAVIを導入。TAVI指導医としての資格を持ち、低侵襲治療に力を入れています。

“治療できなかった人に手が届く” ──それがTAVIの意義

 当院では2021年よりTAVIを導入しました。従来なら外科的手術が難しいとされて諦めていた患者さんでもTAVIであれば治療が可能な場合もあります。
 TAVIの大きなメリットは胸を開かないので手術の時間も入院日数も少ないことです。特に、高齢の患者さんでは、年齢が上がるにつれ全身麻酔や開胸手術のリスクが高まり、これまでは「年齢的に難しい」と治療を見送らざるを得なかったケースも少なくありませんでした。しかしTAVIは、身体への負担が少ないため、90歳を超えるような高齢の方でも適応となる場合があります。
 TAVIは決して“すべての患者さんに使える魔法の治療”ではありませんが、治療の選択肢が増えることで、より多くの患者さんに適切な医療を届けることができます。今後も適応をしっかり見極めながら、患者さんにとって最良の医療を提供していきたいと思います。

多職種が連携し最適な医療を提供

 手術には、循環器内科医師、心臓血管外科の医師や看護師、臨床工学技士、臨床検査技師など、一つの手術に10〜15人くらいのチームで対応しています。手術前にカンファレンスを行い、患者さんの情報を共有して手術にのぞんでいます。弁膜症は薬では治らないので、進行してきたところでタイミングよく適切な治療を行うことが重要です。予防法としては生活習慣に気をつけること。どの病気にも言えることですが、適度な運動とバランスの良い食事を心がけることが大切です。

手術室の様子 TAVIの手術では多職種が連携して治療を行っています。
お話を伺った先生
磯村 彰吾医師

低侵襲治療部門
心臓血管外科部長

磯村 いそむら 彰吾 しょうご 医師

私が大事にしていること
いい仕事をするには、コミュニケーションも大事だと思うので、病棟の飲み会などにはなるべく参加するようにしています。日頃の業務ではゆっくり話せない医師やスタッフと、仕事の話だけでなく、プライベートな話題も交えながらお互いを知ることができる絶好の機会。職場の一体感も生まれ、普段の業務にも良い影響を与えると思っています。

my favorite

趣味という趣味がないのですが、温泉が好きですね。温泉から倒れてうちの病院へ運ばれてくる患者さんが多いので、パトロールも兼ねて行っています(笑)。温泉に行ったときはサウナも必ず入って、リフレッシュしています。

温泉の写真