幅広い専門領域を
カバーしながら、
患者さん一人ひとりの
生活や気持ちに寄り添う外科

 外科と聞くと「手術」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
 もちろん手術は外科の重要な役割の一つですが、当院の総合外科はそれだけにとどまりません。乳腺・甲状腺、呼吸器、消化器など幅広い領域を専門的に診療し、患者さん一人ひとりの持病や生活背景をふまえて、最適な治療方法を共に考えます。
 診断から手術、術後のケアまでを一貫して支える体制を整え、安心して治療に臨んでいただけるよう努めています。患者さんにとって最善の選択肢をともに考え、質の高い医療を提供する── それが私たち総合外科の目指す姿です。

総合外科の3つの柱

1. 乳腺・甲状腺

乳腺・甲状腺
乳がんの手術では、病気を確実に取り除くことが最優先ですが、術後の生活の質(QOL)にも配慮が必要です。当院では、形成外科的手法を取り入れた※オンコプラスティックサージェリーを行い、がんを切除しながら自然な乳房の形をできるだけ保つよう工夫し、女性のライフステージに寄り添った医療を心がけています。
甲状腺の腫瘍やバセドウ病などにも対応し、専門的な手術を実施。再発予防のホルモン療法や放射線治療は他部門と連携し、長期的な支援体制を整えています。
※「オンコプラスティックサージェリー(Oncoplastic Surgery)」は、腫瘍をしっかり取り除く「腫瘍外科  (Onco)」の考え方と、見た目の整え方を重視する「形成外科(Plastic)」の技術を組み合わせた治療法

2. 消化器

乳腺・甲状腺
消化器外科では胃・大腸・肝臓・胆のう・膵臓など、お腹の臓器に関わる病気に幅広く対応しています。がんをはじめとする消化器疾患に対しては、豊富な手術実績があり、体に負担の少ない腹腔鏡手術も積極的に取り入れています。
腹腔鏡では小さな切開で行うことで、術後の痛みや回復期間を軽減し、早期の社会復帰を目指します。臓器や機能をできるだけ温存しながら根治を目指す治療方針のもと、術後の生活の質(QOL)にも配慮。退院後の食事や体調管理についても丁寧にサポートし、安心して日常生活に戻れるよう支援しています。

3. 呼吸器

乳腺・甲状腺
呼吸器外科では、肺・気管・胸膜など、呼吸に関わる臓器の疾患を対象に診療を行っています。手術が必要な場合は、体への負担を減らすために胸腔鏡を用いた低侵襲手術を行い、術後の痛みや入院期間を軽減。早期の回復を目指しています。
呼吸機能をできるだけ守ることにも力を入れ、術後も無理なく動ける、呼吸しやすい状態を保つことで生活の質(QOL)の維持を図ります。進行がんや複雑な症例では他科と連携し、患者さんの生活に合わせた治療と回復支援を行っています。

当院外科の特徴

  • ワンチームで診療

    複数臓器を横断するチーム医療

    当院の外科は、臓器ごとの垣根を設けず「ワンチーム」で診療にあたっています。そのため、複数の臓器に病変がある場合でも、各分野の専門医が連携して同時手術を行うことが可能です。チームで支えることで、手術回数や入院期間を減らし、患者さんの負担を少なく、よりスムーズな回復を目指します。

  • オーダーメイドの医療

    高齢・合併症のある患者さんも
    積極的に受け入れ

    高齢の方や持病のある方も安心して治療を受けられるよう、体調や生活背景に配慮した一人ひとりに合わせた治療方針を丁寧に検討し、無理のない手術・回復を目指します。

  • 丁寧な寄り添い

    手術後の生活や
    退院後のケアまで見据えた
    サポート

    手術が終わったあとも、患者さんが安心して日常生活に戻れるよう、退院後のケアや生活面のサポートにも力を入れています。食事や体調管理、社会復帰に向けたアドバイスなど、丁寧に寄り添いながら支援します。

外科チームを支える
連携力

入退院支援センターが始動

患者さんが安心して入院・退院できるように──。
長野中央病院では、2025年10月より入退院支援センターを開設しました。入院前から患者さんの情報を把握し、病状や生活のようすを事前に確認して、どんな支援が必要かを早い段階で検討します。医師や看護師、相談員(医療ソーシャルワーカー)が協力しながら入院説明や治療準備を進め、同時に介護・福祉サービスや転院先の調整など退院後を見据えた支援にも早期から取り組みます。必要に応じて在宅医療や地域の医療機関とも連携し、患者さんとご家族が安心して自宅や地域に戻れるよう支えます。
業務の集中化・標準化により、安全で効率的な入院・退院支援を実現。外科をはじめとする各診療科と連携し、チーム全体で“入院から退院まで切れ目のない医療”を支えています。

Interview

“総合外科”のチーム医療についてインタビュー

患者さんの人生を支える
“総合外科”のチーム医療

乳腺・消化器・呼吸器──
それぞれの分野を専門とする3人の医師が、
ひとつのチームとして
連携しながら診療にあたる“総合外科”。
今回の座談会では、
日々の診療で大切にしていることや、
患者さんに向き合う際に
心がけていること
などを語っていただきました。
片桐 忍医師

―患者さんと接する際に心がけていることはありますか?

柳沢先生ご本人の意思がしっかりある方には、病状をきちんとお伝えするようにしています。治療に選択肢があるときは、患者さんに説明する中で選択肢を並べすぎると、かえって迷わせてしまうこともあるので、「〇〇さんの場合はこうだから、これがいいと思います」と、少しでも悩みが減るような伝え方をするように意識しています。
角岡先生患者さんからすると医師ってちょっとハードルが高い存在だと思うんですよね。その距離感を少しでも埋められたらいいなと思っています。わからないことがあったら何でも聞いていただきたいんですけど、そもそも「何がわからないのかわからない」という方も多いので。まずは話しやすい、聞きやすい関係作りができたらいいなと思っています。
柳沢先生片桐先生は患者さんの話をしっかり聞いてあげている印象です。

角岡 信男医師

片桐先生できるだけ“3分診療”にならないようには気を付けています。限られた時間の中でも、まずは患者さんの伝えたいことを最後までお聞きすることを意識しています。患者さんは不安があるからこそ来院されていると思うので、患者さんに寄り添い、できるだけ丁寧な対応と伝え方を心がけています。
角岡先生患者さんは、自分が何をすればいいのかわからないからすごく不安になるんですよね。だから、今の状況とこれからの方向性、そして“患者さんご自身が何をすればいいのか”をはっきり伝えることを意識しています。術前なら、体調管理と運動、栄養を整えて元気な状態で入院してもらうことがすごく大事なので、そこだけに集中してくださいと、話すようにしています。そうすると、不安が整理されて、“それだけやればいいんだ”って納得して笑顔で帰って行かれる方が多いんですよ。

柳沢 直恵医師

―医師として大切にしていることは何ですか?

片桐先生私は“そんなことできません”とは絶対言わないように心がけています。例えば外来で「風邪かもしれないから見てほしい」と、言ってくる患者さんがいるんですけど。そういう場合でも「じゃあ内科行ってください」とは言わないで、診察して風邪薬を処方とか。「膝が痛いからちょっと診察してほしい」って言われたら、診察はして、整形外科の受診が必要そうだったら紹介するなど、断らずに対応するようにしています。放り出したりせず、きちんと向き合うようにしています。
角岡先生確かに。患者さんからすると医療者の発言って、一言ひとことがすごく重く感じられると思うんです。私も悩みなど小さいことでも気軽に話せて、雑談もできるような存在でいられたらと。思ったことや言いたいことを言いやすい関係作りを意識しています。
柳沢先生私は医療の専門用語をなるべく使わないように気を付けています。「これは〇〇って言うんですけど、わかりやすく言うとこういう感じです」など、言い換えながらわかりやすく説明するようにしています。あとは“優しく&丁寧に”。一人ひとりの患者さんにまじめに向き合うことを大切にしています。

「外科は“切るだけ”の科ではありません。
私たちは患者さんの命と
生活を総合的に支える
“総合外科”として、
これからも地域の皆さんに
安心を届けていきます」
── そんな片桐先生の力強い言葉が、
これからの長野中央病院の外科の方向性を
明確に示していました。