消化器内科「がん治療」
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医療特集
Special topic

知識と技術も日々進化 日進月歩のがん治療

はじめに

現在、日本人の2人に1人は、一生のうちになんらかのがんにかかると言われるほど、がんは身近な病気です。2021年の厚生労働省の統計においても、死亡原因の第一位は「がん」であり、死因構成割合の25%以上を占めています。当院の消化器内科では、消化管(食道・胃・大腸)、肝臓、胆のう、膵臓で発生したがん治療を行っています。がん細胞を切除して完治を目指すポリペクトミーやESD、症状を緩和するための消化管ステント、ERCPなど従来からある治療法はもとより、近年めざましく進化する薬物療法(抗がん剤治療)に対応するために、知識をブラッシュアップして日々診療にあたっています。

消化器とは
薬剤師さんに聞きました!進化する薬物療法

薬物療法とは飲み薬や注射などで投与された抗がん剤が、血液を介して効果を発揮する全身治療のことを言います。抗がん剤治療の目的は、がんを治癒させること、がんの増殖を抑え、延命効果を得ること、がんが原因と考えられる症状を和らげること、生活の質の改善など様々です。がんの薬物療法は日々進歩しており、細胞が分裂して増える過程に作用する昔ながらの殺細胞性抗がん剤の他、ここ数年は、がん細胞の中の増殖や転移に関係している遺伝子を狙い撃ちする分子標的薬といわれる新しいタイプの薬も発売されています。また2014年には、まったく新しいタイプの免疫療法の一種である免疫チェックポイント阻害剤が発売されました。これらの薬物を効果的に組み合わせて治療することで、治療効果が飛躍的に高くなったがんの種類もあります。薬物療法の進歩によって、入院期間の短縮や副作用の軽減など、患者さんの身体的、精神的、そして経済的な負担が抑えられるような治療法が増えています。

薬剤師 三ツ井 俊憲

消化器内科のがん治療

Point 内視鏡で粘膜の表面を取り除く治療
ポリペクトミーあるいはESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)

胃がんであれ、大腸ポリープ(大腸がん)であれ、あるいは食道がんであっても、腫瘍が粘膜の浅いところまでの進行に留まっている場合は、内視鏡で粘膜の表面を取り除くだけで完治します。この方法が、ポリペクトミーあるいはESDと呼ばれるものです。この二つの違いは、切除用の輪になったワイヤーを縛り上げて、瞬間的に切除してしまうものと、少しずつ丁寧に剥離していく方法の違いになりますが、病態に適したやり方を選ぶことになります。幸い、当院の健診などで発見される半分以上の消化管がんは、これらの治療にふさわしい早期のものです。これら内視鏡的治療は、いわゆる開腹手術が必要にならないので、体への負担がとても軽くすみます。今後も当科ではこれらの治療を安全性に十分に配慮しながら積極的に広めていきたいと考えています。

Point 消化管を開通させ食事が出来ができるようにする治療
消化管ステント

ERCPは、内視鏡を使用して胆管や膵管などの詳細な観察を行い、検査や治療を行う手段です。内視鏡を食道、胃、十二指腸に進め、そこから膵臓や胆道へアクセスし、X線を使用して管の中を直接観察します。膵臓や胆道にがんが疑われる場合は、内視鏡で患部の一部を採取して、細胞の検査を行うこともできます。また、がんにより胆道が圧迫されて黄疸や肝障害をきたしている場合は、ステントを挿入することで圧迫を緩和し、患者さんのデータや全身状態を改善させます。検査や処置は比較的短時間で完了し、状態が良ければ翌日から食事が可能です。

Point 内視鏡で胆菅や膵菅などの治療や検査ができます
ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)

ERCPは、内視鏡を使用して胆管や膵管などの詳細な観察を行い、検査や治療を行う手段です。内視鏡を食道、胃、十二指腸に進め、そこから膵臓や胆道へアクセスし、X線を使用して管の中を直接観察します。膵臓や胆道にがんが疑われる場合は、内視鏡で患部の一部を採取して、細胞の検査を行うこともできます。また、がんにより胆道が圧迫されて黄疸や肝障害をきたしている場合は、ステントを挿入することで圧迫を緩和し、患者さんのデータや全身状態を改善させます。検査や処置は比較的短時間で完了し、状態が良ければ翌日から食事が可能です。

長野中央病院の消化器内科

地域の消化器内科医院の先生方とも密接な関係を築き、日々チームで患者さん一人ひとりにとって最適な治療法を模索しています。消化器専門医になるために研修を受けにくる医師も増え、若手からベテラン医師まで切磋琢磨しながら、患者さん目線と最先端医療の両立を目指しています。

Interview

消化器内科のがん治療についてインタビュー

最新の技術と知識とプロフェッショナルの協同で
患者さんが自分らしく生きるためのサポートを

消化器内科医として向き合うがんの薬物療法

当院の消化器内科の薬物療法は、患者さん自身がどう生きたいのかを考え、その想いを実現するためのサポートを大切にしています。「患者さんが自分の家族だったらどうか」と自分にとって身近な人を思い描きながら、患者さんへの寄り添い方を考えて治療を進めています。同じがんを患っても、患者さんの年齢や持病などによって症状はさまざまで、家庭環境やライフスタイルも違います。医療が進歩し選択肢が広がる中で、患者さん一人ひとりに合わせた治療法を選択するのは大変なことです。医師のみならず、看護師、薬剤師、社会福祉士、リハビリスタッフ、栄養士など、あらゆる分野の専門家が患者さんが「自分らしく生きる」ためのお手伝いをチーム一丸となって行っています。

研究者を招いたカンファレンスで情報を最新にアップデート

抗がん剤治療はガイドラインが追いつかないほど次々に新しい治療薬が出てくるため「これまでと同じ薬を同じ使い方で…」というわけにはいきません。そのため、がん薬物治療の研究者を招いた抗がん剤のカンファレンスを隔週で行うなど、積極的に外部の専門家からアドバイスを受けたり、最新情報を学んでいます。さまざまな角度から患者さん一人ひとりにあった処置や治療薬を丁寧に検討し、患者さんの「体調のよい時間を延ばせる」ように努力を続けています。

外来の患者さんは「化学療法室」で治療を行う

緩和ケアは治療の初期段階から導入し患者さんに寄り添う

「緩和ケア」を終末期医療とイメージする方は多いと思いますが、当院では病気の初期段階から継続して導入すべき治療のひとつだと考えており、「緩和ケア」は抗がん治療と同時に行われています。当院の緩和ケアは専門外来、緩和ケア病棟を中心に、さまざまな病状の患者さんの体調管理を行っています。今後は症状があってもできるだけ在宅で過ごしたい患者さんの希望を叶えられるように在宅診療にも力を入れていきたいと考えています。

お話を伺った先生
後田 圭医師

消化器内科
消化器内科部長

松村 まつむら 真生子 まきこ 医師

私が大事にしていること

謙虚さを忘れずに

病気、医学、患者さんなど、すべてのこと、人に対して謙虚な気持ちを忘れずに、丁寧な対応を心がけています。

チームで日々勉強

隔週でがん薬物療法カンファレンス、毎週水曜日には勉強会などを行いながらスタッフ全員で集まる時間を大切にしています。

my favorite

休日は山野草を求めて自転車で里山に出かけています。昨年Eーバイクを購入してからは遠くまで気軽に行けるようになり、美しい長野の四季をより一層満喫しています。先日も白馬や横手山までツーリングしてきました。※E-バイク スポーツタイプの電動アシスト自転車